2018年3月5日
脱水症は夏に起こるというイメージが強いのですが、冬にも発症しやすいということをご存じですか。
発汗から起こる夏の「脱水症」の代表的な合併症が、熱中症です。体温が下がらなくなり、全身の臓器にダメージが及びます。それに対して不感蒸泄(※①ふかんじょうせつ)が増えることが要因の冬の乾燥からの脱水は、水分が身体からじわじわと失われることで起こります。
水分が失われると血液が濃くなり、ドロドロの状態になります。その結果、生じる代表的な合併症が脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞です。「梗塞」とは、臓器を流れる血流が不十分になり、臓器に障害が起こることをいいます。
血液がドロドロになると、血液中で血栓という血の固まりが生じやすくなります。血栓が脳の血管で詰まると脳梗塞、心臓の血管で詰まると心筋梗塞、肺の血管で詰まると肺梗塞になります。
脳梗塞や心筋梗塞は冬になると増える病気です。以前は寒さで血管が縮むことが冬に増える理由だと考えられていましたが、最近はそれに加えて不感蒸泄で失われた水分の補水を怠った結果、血液がドロドロになることも脳梗塞や心筋梗塞が冬に増える要因のひとつと考えられるようになりました。
「かくれ脱水」を防ぐために、室内が乾燥しない工夫をしましょう。できれば湿度計を設置し、50~60%の湿度を保てるようにするとよいです。加湿器がなくても、室内に濡れたタオルを干すなどちょっとした工夫でも乾燥は防げます。また高齢になると喉の渇きを自覚しにくいという特徴から、かくれ脱水になりやすいと言われています。喉が渇いていなくても、意識してこまめに水分を補給するようにしましょう。
これからの季節、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高める、危険な「冬のかくれ脱水」にお気を付け下さい。
※①不感蒸泄…無自覚のまま皮膚や気道から蒸散する水分のこと。